尖閣諸島は誰のモノ?知っておきたい日中それぞれの対立意見問題

東シナ海における尖閣諸島を巡る地政学的・法理的・歴史的包括分析報告書:2026年時点の情勢と展望

尖閣諸島が侵略された?よくわかんないってのは40歳にもなってとても恥ずかしい。けど今更誰にも聞けない。元々どんな経緯で問題になっているのか調べてみた。

本レポートを読むと、日中および関連諸国が尖閣諸島についてどのような見解なのかを知ることができて、また各国の思惑がなんとなく想像できるようになる。

読者の皆様のご意見や感想をコメント頂けると幸いだ。

目次

東アジアの火薬庫としての尖閣諸島

研究の背景と目的

東シナ海の南西部に位置する尖閣諸島(中国名:釣魚島)は、その地理的な規模の小ささに反比例して、現代の国際政治において極めて巨大な地政学的重量を有している。日本、中華人民共和国(以下、中国)、および中華民国(以下、台湾)の三者が領有権を主張するこの島嶼群は、単なる二国間の領土紛争の枠を超え、インド太平洋地域の安全保障アーキテクチャ、海洋法秩序、そしてエネルギー安全保障が交錯する結節点となっている。本報告書は、2026年1月現在における尖閣諸島を巡る最新の情勢、歴史的経緯、法理的な対立構造、および国際社会の関与について、入手可能な資料に基づき包括的に分析を行うものである。

特に、2020年代半ば以降、中国海警局(CCG)による活動の常態化と質的強化、日本国内の政治情勢の変化(2025年の高市早苗政権の誕生と対中姿勢の硬化)、および米国をはじめとする国際社会の関与の深化により、事態は新たな局面(フェーズ)に突入している。本稿では、これらの動的な要素を詳細に解剖し、現状がいかなる歴史的文脈の上に成立し、将来いかなる方向へ進みうるかを展望する。

地理的・戦略的重要性

尖閣諸島は、沖縄県石垣市に属する島嶼群であり、魚釣島、北小島、南小島、久場島、大正島、沖の北岩、沖の南岩、飛瀬の5島3岩礁から構成される。総面積は約5.56平方キロメートルに過ぎないが、その戦略的価値は計り知れない。

第一に、資源的価値である。1968年の国連アジア極東経済委員会(ECAFE)による学術調査報告書が、東シナ海大陸棚に「イラクに匹敵する」大量の石油・天然ガス埋蔵の可能性を指摘して以降、周辺海域の海底資源は各国の死活的利益となった 。現在進行中の中国による日中中間線付近でのガス田開発(21基のプラットフォーム建設)は、この資源競争が現在進行形で激化していることを如実に示している 。

第二に、軍事的・地政学的価値である。尖閣諸島は、中国の軍事戦略における「第一列島線(九州―沖縄―台湾―フィリピン)」の要衝に位置している。中国海軍(PLAN)が太平洋へ進出し、米軍の介入を阻止する「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」能力を確立するためには、この海域の制海権・制空権確保が不可欠となる。逆に、日米同盟にとっては、中国の海洋進出を封じ込め、シーレーンを防衛するための最前線の防波堤としての機能を持つ。

歴史的経緯と領有権主張の深層分析

尖閣諸島問題の複雑さは、異なる歴史的記憶と法解釈が並存している点にある。ここでは、19世紀以前の記録から現代に至るまでの経緯を詳述し、日中双方の主張の根拠とその論理的整合性を検証する。

1895年以前:歴史的認識の相克

中国および台湾は、明代(1368-1644)および清代(1644-1912)の文献を根拠に、釣魚島が古来より中国の領土であったと主張する。具体的には、1534年の冊封使・陳侃の『使琉球録』などに「釣魚嶼」の記述があり、これらが中国から琉球へ向かう航路上の標識として利用されていたこと、また明代の海防区域に含まれていたことを挙げる 。台湾外交部は、これらの島々が「台湾の附属島嶼」として清朝の版図にあったとする 。

これに対し、日本政府は、これらの古文書における記述は単なる地理的な認識や航路の目安を示したに過ぎず、中国がこれらの島々に対して継続的かつ実効的な支配(主権の行使)を行っていた証拠にはならないと反論する 。国際法上、単なる発見や地理的知識の保有は領有権の根拠としては不十分であり、主権の意思を持った実効的支配(占有)が必要とされるためである。日本側の調査(1885年以降)では、尖閣諸島は無人であり、清国の支配を示す痕跡(居住、行政施設の設置、徴税など)は確認されなかったとされる 。

1895年の日本領土への編入:無主地先占の法理

日本の領有権主張の核心は、国際法上の「無主地先占(Occupation of Terra Nullius)」の法理にある。

無主地先占とは、どの国にも属さない「無主地」に対し、国家が領有の意思を持って実効的に支配を確立することで、その土地の領有権を法的に取得する国際法上の原則のこと。

1885年以降、日本政府は沖縄県当局などを通じて尖閣諸島の現地調査を慎重に実施した。当時の明治政府、特に山縣有朋内務卿や井上馨外務卿は、清国との摩擦を避けるため極めて慎重な姿勢をとり、直ちには標杭の建設を行わなかった。しかし、10年に及ぶ調査の結果、これらの島々が清国の支配下にない「無主地」であるとの確証を得た上で、日清戦争(1894-1895)の勝利が確定的となった1895年1月14日、閣議決定により正式に日本領土への編入を行った 。

このタイミングについて、中国側は「日清戦争のどさくさに紛れて掠め取った(窃取した)」と主張し、実質的には戦争による領土獲得であるとして非難する 。しかし、日本側は、この編入措置が1895年4月の下関条約締結(および台湾・澎湖諸島の割譲)よりも前の出来事であり、下関条約第2条に基づき割譲された「台湾およびその附属島嶼」には尖閣諸島は含まれないという法理的立場をとっている 。

第二次世界大戦後の処理とサンフランシスコ平和条約

戦後の領土処理において、尖閣諸島の法的地位は再び重要な論点となる。

1951年に署名されたサンフランシスコ平和条約第2条(b)において、日本は「台湾および澎湖諸島」に対するすべての権利、権原および請求権を放棄した。中国および台湾の主張によれば、尖閣諸島は「台湾の附属島嶼」であるため、この条項により日本が放棄した領域に含まれ、カイロ宣言(1943年)およびポツダム宣言(1945年)の趣旨に従って中国に返還されるべきとされる 。

しかし、同条約の解釈および運用において、尖閣諸島は第2条の放棄領土ではなく、第3条に基づき米国の施政権下に置かれる「南西諸島」の一部として扱われた。実際、米軍は久場島(黄尾嶼)や大正島(赤尾嶼)を射爆撃場として使用し、日本国政府に対して使用料を支払うなどの行政的措置をとっていた 。この事実は、米国および連合国が尖閣諸島を「日本領土の一部(ただし施政権は米国)」と認識していたことを示唆しており、日本の「尖閣諸島は台湾に含まれない」という主張を補強する強力な根拠となっている 。

沖縄返還と「棚上げ」論争の発生

1971年の沖縄返還協定により、尖閣諸島の施政権は1972年に米国から日本へ返還された。この過程で、二つの重要な歴史的・外交的展開が生じた。

米国の中立政策の起源

沖縄返還協定の批准に関する米上院公聴会において、ニクソン政権(当時)は、中国および台湾からの領有権主張の高まりを受け、非常に法技術的な立場を採用した。国務省当局者は、「米国は施政権(administrative rights)を日本に返還するが、底にある主権(sovereignty)の帰属については中立の立場をとる」と証言した 。すなわち、施政権の返還は主権の決定を意味するものではなく、対立する請求権(claims)を害するものではないという解釈である。 この「施政権は日本にあるが、領有権については中立」という米国のドクトリンは、後の日米安保条約第5条適用(施政権への攻撃に対する防衛)の論理的基盤となると同時に、中国側に「領有権紛争は未解決」という言質を与える結果ともなった。

日中国交正常化と「棚上げ」の真実

1972年の日中国交正常化交渉および1978年の日中平和友好条約締結交渉において、尖閣諸島問題は主要な懸案事項であった。ここでなされた首脳間のやり取りが、いわゆる「棚上げ合意」の有無を巡る最大の争点である。

<1972年 田中角栄・周恩来会談>

日本側の外交記録によれば、田中角栄首相が尖閣諸島について提起した際、周恩来首相は「今回は話したくない。今これを話すのはよくない。石油が出るから問題になった。石油が出なければ、台湾も米国も問題にしなかった」と述べ、議論を回避した 。

<1978年 鄧小平発言>

鄧小平副首相(当時)は訪日時の記者会見で、「我々の世代は解決する知恵がない。次の世代は我々より賢いだろう。その時、皆が受け入れられる解決策が見つかるだろう。10年棚上げしても構わない」と発言した 。

中国側はこれらのやり取りをもって、両国間に「紛争を棚上げする」という外交的合意(コンセンサス)が成立したと主張する 。一方、日本政府は、「領有権問題自体が存在しない以上、棚上げすべき対象もない」との立場を堅持し、中国側の発言は一方的な提案に過ぎず、日本がこれに合意した事実はないとしている 。この認識のギャップ(Rashomon effect)が、2012年の日本政府による尖閣三島国有化を巡る激しい対立の導火線となった。

現状分析:2020年代における危機の構造化(2024-2026)

2012年の国有化以降、尖閣諸島周辺海域における中国の活動は常態化したが、2024年から2026年にかけての動向は、単なる「パトロール」から「実効支配の既成事実化」および「軍事作戦への準備」へと質的に転換している。

中国海警局(CCG)の戦術的進化と統計的推移

リサーチデータに基づき、近年の中国海警局の活動を分析する。

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接続水域入域日数領海侵入頻度特記事項・戦術的変化
2020年333日24件「365日体制」の確立。荒天時以外は常駐。
2021年332日34件「海警法」施行。武器使用権限の明文化。
2022年336日28件日本漁船への接近・追尾事案の増加。
2024年過去最多水準頻発大型武装船の投入増加。
2025年高水準維持頻発領空侵犯(ヘリ)、調査船によるブイ設置。
2026年継続中1月13日等機関砲搭載船4隻による同時領海侵入。

「法執行」の演出と管轄権の主張

中国海警局は、日本の領海内で操業する日本漁船に対し、あたかも自国の管轄海域であるかのように接近し、退去勧告や追尾を行う行動を常態化させている 。これは、国際社会に対し「中国がこの海域で法執行を行っている」という実績を積み上げ、日本の実効支配を形骸化させる「サラミスライス戦術」の典型である。

武装化と大型化:軍との一体化

かつては「ホワイトハル(白い船体)」として非軍事性をアピールしていた海警船だが、2018年の組織改編で人民武装警察部隊(中央軍事委員会指揮下)に編入されて以降、軍事色を強めている。2026年1月には、機関砲を搭載した船舶4隻が同時に領海侵入を行うなど、海上保安庁の巡視船に対する火力優越を誇示するような行動が見られる 。また、1万トン級の超大型巡視船(「海警2901」等)を展開し、物理的な威圧を行っている。

グレーゾーン事態の多層化

中国の圧力は海上にとどまらない。

空域

2025年5月、海警船から離発着したヘリコプターが日本の領空を侵犯した。また、ドローンの飛行も確認されており、空からの監視・威圧が新たな懸念事項となっている 。

海洋調査とブイ

日本の排他的経済水域(EEZ)内において、中国の海洋調査船(「海科001」「向陽紅22」等)が事前同意なく活動し、海底地形の調査や観測ブイの設置を行っている。これらは潜水艦の航行ルート策定などの軍事目的に転用可能なデータを収集している可能性が高い。

情報戦とAIS

CSISのレポートによれば、中国船はAIS(自動船舶識別装置)の信号を操作(偽装、スイッチオフ)し、その位置や身元を隠蔽しながら活動する戦術を採用している 。

東シナ海ガス田開発の現状

資源開発においても、中国は「現状変更」を加速させている。2008年に日中両国は「東シナ海資源開発に関する合意」を形成し、共同開発に向けた交渉を行うことで一致したが、2010年の漁船衝突事件以降、交渉は中断している 。 その間隙を突く形で、中国は日中中間線の中国側海域において、ガス田掘削施設の建設を一方的に進めている。2025年時点で確認されたプラットフォームは21基に達しており、日本側は「地下構造が繋がっている日本側の資源が吸い取られる」として強く抗議している 。一部のプラットフォームには軍事用レーダーの設置も疑われており、資源開発施設が軍事拠点化する懸念も強まっている。

2025-2026年の政治危機:「高市発言」と外交的報復

2025年後半から2026年初頭にかけて、日中関係は政治的にも極度の緊張状態に陥った。 資料 によれば、2025年に日本の首相に就任した高市早苗氏は、国会答弁において「台湾に対する中国の攻撃は、日本の安全保障関連法制に基づく『存立危機事態』に該当しうる」との認識を示し、自衛隊による集団的自衛権行使の可能性を示唆した。 これに対し、中国政府は「内政干渉」として激しく反発。大阪総領事がSNSで高市首相を名指しで批判する異例の事態となり、中国は対抗措置として日本産水産物の輸入停止措置の継続・拡大、日本への渡航制限、文化交流の停止などを発動した。この「2025-2026年 日中外交危機」は、尖閣諸島周辺での海警局の活動活発化とも連動しており、現場の緊張を政治的対立がさらに増幅させる悪循環が生じている。

各国の見解と国際的アラインメント

尖閣諸島問題は、各国の戦略的意図が交錯する国際的なイシューとなっている。ここでは、主要プレイヤーの公式見解とその変遷を詳細に整理する。

日本:防衛力強化と「法の支配」の貫徹

日本政府は、「領有権問題は存在しない」という基本立場を堅持しつつ、中国による「力による現状変更」に対抗するため、物理的・外交的対応力を強化している。

防衛力整備

2025年版防衛白書は、中国を「これまでにない最大の戦略的挑戦」と位置づけ、南西諸島の防衛体制強化(ミサイル部隊の配備、統合作戦司令部の設置など)を明記した 。

海上保安庁の能力向上

海上保安庁年次報告書(2025年版)は、大型巡視船の増強や無人機の活用、他国海上保安機関との連携強化を打ち出し、尖閣領海警備の専従体制を維持・強化している 。

中国:強硬姿勢と「核心的利益」化

中国政府は、釣魚島を台湾とともに「核心的利益」と位置づけ、妥協の余地を見せていない。

海警法と主権行使

2021年の海警法制定により、管轄海域内での外国船への武器使用や構造物の撤去を法的に正当化し、国内法に基づく執行を強化している 。

外交的レトリック

外交部報道官は、日本の行動を「右傾化」「戦後国際秩序への挑戦」と批判し、歴史問題を絡めて国際的なプロパガンダを展開している 。

米国:安保条約第5条と「統合抑止」

米国の立場は、歴史的に一貫性を保ちつつ、対中抑止の観点からより踏み込んだ表現へと進化している。

歴史的経緯

ニクソン政権以来、「領有権には中立、施政権には条約適用」という立場をとってきた 。

バイデン・トランプ両政権のコミットメント

バイデン政権

2024年の日米2+2会合等で、「核を含むあらゆる能力を用いた日本防衛」と「第5条の尖閣適用」を再確認した 。

トランプ政権(2025年〜)

2025年2月のトランプ・石破会談において、共同声明で第5条の適用を明記するとともに、「日本の施政を損なおうとするあらゆる一方的な行動への強い反対」を表明した 。これは、海警局によるサラミスライス戦術に対する明確な警告としての意味を持つ。

軍事的連携

米軍は、日本の自衛隊との相互運用性を高め、南西諸島を含む第一列島線沿いでの共同訓練や、防衛産業基盤の統合(DICAS)を進めている 。

台湾:平和イニシアチブと実利の追求

台湾(中華民国)の立場は、中国(PRC)とは一線を画している。

PRCとは、People’s Republic of Chinaの略で中華人民共和国および中国製を意味する。

東シナ海平和イニシアチブ

2012年、当時の馬英九総統が提唱した構想。「主権は分割できないが、資源は分かち合える」として、対立の棚上げと対話による解決を呼びかけた 。

日台漁業取り決め(2013年)

この平和的アプローチの具体的成果として、2013年に日台間で漁業取り決めが締結された。これにより、北緯27度以南の日本のEEZ内に「法令適用除外水域」を設け、台湾漁船の操業を認めた 。この合意により、かつて頻発していた日台間の漁業紛争は沈静化し、中国が目論む「中台連携」を阻止する戦略的効果をもたらした 。

頼清徳政権等の対応

現在の民進党政権は、中国の軍事的脅威(台湾周辺での演習)に対し、日本やフィリピンとの安全保障上の連携を重視しており、尖閣問題での対日対立を避ける傾向にある 。

国際社会(G7, EU, フィリピン等)の反応

G7

2025年のG7サミット(プーリア)および外相会合において、首脳宣言で「東シナ海および南シナ海における力または威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対する」との文言が盛り込まれた 。

EU

EUは、日EU首脳会談(2025年)後の共同声明で、東シナ海の状況への深刻な懸念を表明し、UNCLOSに基づく法の支配の重要性を強調している。また、中国の人権問題や台湾海峡の平和と安定にも言及し、対中認識を厳しくしている 。

フィリピン

南シナ海で中国との激しい対立にあるフィリピンは、日本の立場を強力に支持している。2025年には日米比豪の防衛相会合において、東シナ海情勢に対する懸念を共有し、「自由で開かれたインド太平洋」のための連携を確認した 。

分析とインサイト:2026年以降の展望

以上の情報を総合すると、尖閣諸島情勢には以下の構造的なトレンドとリスクが浮かび上がる。

「管理された対立」から「実力行使の応酬」へ

これまで日中両国は、決定的な衝突を避けつつ主張を展開する「管理された対立」の枠内にあった。しかし、2025年以降の中国海警局の武装強化と日本の防衛力抜本強化は、その均衡を崩しつつある。特に、中国が日本の施政権を物理的に無効化しようとする動き(領海内での法執行パフォーマンスやブイ設置)は、日本側に「警察力による対応の限界」を意識させ、自衛隊の海上警備行動発令のハードルを下げる要因となっている。

台湾有事とのリンケージ

高市首相の発言が示唆するように、尖閣諸島防衛と台湾防衛は不可分一体のものとして認識されつつある。中国が台湾侵攻を行う場合、側面の脅威となる在沖縄米軍や自衛隊を牽制・無力化するために、尖閣諸島を同時に攻略・占拠するシナリオが現実味を帯びている。CSIS等のレポートが警告する「グレーゾーンから有事へのシームレスな移行」は、まさにこのシナリオを指している。

結論:長期的消耗戦への備え

今後の展望として、中国が短期的に領有権主張を取り下げる可能性は皆無である。むしろ、圧倒的な造船能力と海警船の数を背景に、日本の海上保安庁を疲弊させる「長期的消耗戦(Attrition Warfare)」を継続すると予想される。 日本にとっては、以下の3点が重要な戦略的柱となる。

現場対応能力の維持

海上保安庁の体制強化による、隙のない警備体制の継続。

抑止力の強化

日米同盟の信頼性向上と、自衛隊による迅速なバックアップ態勢の構築。

外交的包囲網

G7やクアッド、フィリピン、台湾等との連携を通じ、中国の行動が国際法違反であるとの認識を国際社会に定着させ、外交的コストを高めること。

尖閣諸島は、21世紀の国際秩序が「法の支配」によって維持されるか、それとも「力による変更」を許容するかを決定づける、最も重要な最前線の一つであり続けるだろう。

付録:主要データ・資料比較

表1:尖閣諸島に関する日中主張の主要論点比較

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論点日本の主張中国の主張
領有権の根拠1895年の無主地先占(国際法準拠)。清国の支配が及んでいないことを確認して編入。明・清代からの歴史的権利。古来より中国領であり、カイロ宣言等で返還されるべき。
下関条約尖閣諸島は条約の対象外(条約締結前の1月に編入)。尖閣は台湾の附属島嶼として、不当条約により日本に割譲された。
戦後の地位サンフランシスコ条約第3条で米国施政下に。1972年に日本へ返還。SF条約は中国不参加のため無効。カイロ宣言に基づき中国へ返還されるべき。
棚上げ合意存在しない。領有権問題が存在しない以上、棚上げもない。周恩来は会話を避けただけ。存在する。1972年、1978年に首脳間で政治的な黙示の合意があった。
現状認識解決すべき領有権問題は存在しない。中国が一方的に現状変更を試みている。領有権論争は存在する。日本が2012年の国有化で現状を破壊した。

表2:中国海警局船の活動推移(2020-2026)

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接続水域入域(日)領海侵入(件/隻)主な特徴
2020年33324 / –荒天時以外の常時展開が定着。
2021年33234 / –海警法施行。武器使用権限の明確化。
2022年33628 / –日本漁船への接近・追尾が増加。
2023年352– / –過去最多の入域日数を記録。
2024年高水準多数機関砲搭載船の常態化。
2025年高水準頻発領空侵犯(ヘリ)、ブイ設置、外交危機の発生。
2026年継続中4隻同時侵入(1月)軍艦並みの武装を持つ船舶による圧力。

<参考文献・出典>
本レポートで参照した主な情報源および関連リンクは以下の通りです。

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