業界のゲームチェンジャー格安メガネ店。眼鏡業界25年の変遷

日本眼鏡産業の構造転換と競争優位性の変遷:SPAモデルの台頭から業界再編の完遂まで(2000年-2026年)

目が見えづらくなってきた。老眼かな。メガネを新調しようとして思い出したのが、2000年代に通った下北沢のメガネ屋「Zoff」だ。5,250円で買えることが衝撃的だった。今使っているメガネはJINSだが、当時の下北沢にJINSはなかった。最近では渋谷や新大久保にパリミキのおしゃれな店舗があることもあって、業界にどんな変化があったのか気になり調べてみた。

本レポートを読むと、業界でおきる革命の例と、先行者であった大手企業がどう振る舞うべきかのかを知ることができる。

読者の皆様のご意見や感想をコメント頂けると幸いだ。

目次

市場構造の歴史的転換点

20世紀末までの日本における眼鏡市場は、典型的な「情報の非対称性」に支配された高付加価値・低回転の産業であった。当時の眼鏡は、視力補正という医療的機能に特化した「耐久消費財」として位置づけられ、平均購入単価は3万円から5万円、あるいはそれ以上の価格帯が一般的であった。消費者はレンズとフレームの適正価格を判断する基準を持たず、技術料を含んだ不透明な価格体系を受け入れざるを得なかった。この「旧体制(アンシャン・レジーム)」においては、パリミキ(当時の三城)や愛眼といった全国チェーンが、一等地の路面店に重厚な設備と豊富な人員を配置し、対面販売による信頼構築を主軸としたビジネスモデルで市場を寡占していた。

しかし、2000年代初頭に発生した「価格破壊」は、単なるデフレーションの産物ではなく、サプライチェーン・マネジメント(SCM)の根本的な革新と、消費者の価値観変容を伴う構造的な産業革命であった。アパレル業界で先行していたSPA(製造小売業)モデルの導入は、中間流通の排除と企画・製造・販売の垂直統合を可能にし、眼鏡の平均単価を劇的に引き下げた。これにより、眼鏡は「数年に一度買い替える医療機器」から「TPOに合わせて掛け替えるファッション雑貨」へと再定義されたのである。

本レポートでは、2000年から2026年初頭に至る四半世紀にわたる眼鏡業界の興亡を、主要企業の戦略分析を通じて体系化する。特に、JINSやZoffに代表される「新興SPA勢力」の台頭メカニズム、それに対抗した「老舗チェーン」の苦悩と変革、そして2020年代半ばに加速したM&Aによる「第三次業界再編」の全貌を詳らかにする。特に2025年から2026年にかけて発生した、インターメスティック(Zoff)によるビジョナリーホールディングス(メガネスーパー)の完全子会社化や、キタムラ・ホールディングスによるビジョンメガネの買収は、市場が成熟期から統合期へ移行したことを示す決定的な証左である。これらの事象を単なるニュースとしてではなく、産業構造の不可逆的な変化として分析する。

SPA革命と「格安メガネ」カテゴリーの創出(2000年-2010年)

伝統的バリューチェーンの崩壊

1990年代まで、眼鏡の流通経路は複雑怪奇であった。フレームメーカー(主に福井県鯖江市)から問屋、代理店を経て小売店に届く多段階構造に加え、レンズメーカーからの別ルートでの仕入れが必要であり、小売価格には幾重もの中間マージンが上乗せされていた。また、検眼や加工技術への対価が不明確なまま製品価格に転嫁されていたため、消費者は「高いが、それが安心料」という認識を持たされていた。

この構造に風穴を開けたのが、2001年に創業したインターメスティックが展開する「Zoff」である。Zoffは、企画から製造(中国等の提携工場)、販売までを一貫して管理するSPAモデルを業界で初めて本格導入した。これにより、中間マージンを全廃し、「5,000円、7,000円、9,000円」という、従来では考えられなかった「3プライス(スリープライス)システム」を実現した。この価格設定は、消費者に強烈なインパクトを与え、眼鏡購入の心理的ハードルを一気に引き下げた。

JINSの参入と「レンズ代0円」の衝撃

Zoffに続き、ジェイアイエヌ(現・ジンズホールディングス)が「JINS」ブランドで参入したことで、競争はさらに激化した。JINSは後発の不利を覆すため、さらに徹底した合理化を推進した。特筆すべき戦略的転換点は、「追加料金0円」システムの導入である。 従来の眼鏡店では、近視の度数が強い場合や乱視がある場合、薄型レンズへの変更に追加料金が発生することが常識であった。これに対しJINSは、世界的なレンズメーカーとの包括契約による大量調達でコストを極限まで下げ、どれだけ度数が強くても追加料金を取らないという画期的な価格体系を打ち出した。これは、強度近視人口の多い日本において、潜在的な不満を解消する強力なバリュープロポジションとなった。

消費者行動の変容:複数所有の一般化

SPAチェーンの台頭は、消費者の購買行動を根本から変えた。低価格化により、消費者は「予備の眼鏡」「PC用眼鏡」「運転用眼鏡」「休日のファッション用眼鏡」など、複数の眼鏡を用途に合わせて所有することが可能になった。この「複数所有(マルチペア)」の文化定着こそが、単価下落による市場縮小を防ぎ、むしろ販売本数の増大によって市場規模を維持・拡大させた要因である。眼鏡は厳粛な医療行為の対象から、ユニクロでTシャツを選ぶような日常的な消費対象へと変貌を遂げたのである。

機能性アイウェアとブランディングの深化(2010年-2020年)

JINSによる「非・視力矯正市場」の開拓

2010年代に入ると、単なる価格競争は飽和の兆しを見せ始めた。そこでJINSが打ち出したのが、「目の悪くない人にも眼鏡を売る」というブルーオーシャン戦略である。その象徴が、2011年に発売された「JINS PC(現・JINS SCREEN)」である。スマートフォンやPCから発せられるブルーライトをカットするという機能的価値を訴求し、視力矯正を必要としない層(正視層)を眼鏡店に呼び込むことに成功した。 この戦略は、眼鏡市場のTAM(Total Addressable Market:獲得可能な最大市場規模)を物理的に拡大させる効果を持っていた。JINSはさらに、軽量素材を用いた「Airframe」シリーズや、サウナ用眼鏡などのニッチ需要を掘り起こす製品開発を続け、技術革新による差別化を確立した。2024年8月期の決算において、JINSの売上総利益率が77.6%〜78.0%という驚異的な高水準にあることは、SPAモデルの完成度の高さと、高付加価値製品の販売比率が高いことを裏付けている。

OWNDAYSの「再生」と企業文化による差別化

2000年代後半、多くの新興格安チェーンが乱立し、過当競争の中で淘汰されていった。その中で、倒産寸前の状態から奇跡的な復活を遂げたのがOWNDAYSである。2008年、現グループCEOの田中修治氏が経営権を取得した当時の同社は、巨額の負債を抱え、銀行団からも「絶対に倒産する」と見放された状態であった。

OWNDAYSの再生プロセスにおける特異性は、商品や価格だけでなく、「人(従業員)」と「ストーリー」に焦点を当てた点にある。田中氏は、不透明だった人事評価制度を刷新し、立候補制で管理職を決める「選挙システム」や、決算書の全社員公開といった極めて透明性の高い経営手法を導入した。これにより従業員のエンゲージメントを劇的に高め、接客品質の向上につなげた。 また、国内市場が大手による消耗戦の様相を呈していた時期に、いち早くシンガポールや台湾など東南アジア市場へ進出した判断も決定的であった。日本の接客品質とSPAによる即日渡し(最短20分での加工)のスピードは、アジア市場において圧倒的な競争優位性を発揮した。

旧勢力の苦闘とビジネスモデルの強制転換

新興勢力の躍進の裏で、パリミキ(三城)、愛眼、メガネスーパーといった既存大手は、長期にわたる業績低迷に苦しんだ。彼らが直面したのは、「価格で勝てず、品質の差も伝わりにくい」という二重苦であった。

パリミキホールディングス:規模の縮小と「体験」への回帰

かつて業界売上高断トツの首位であったパリミキは、店舗数の多さが逆に重荷となる「負の遺産」に苦しめられた。駅前一等地やロードサイドの大型店は固定費が高く、低価格攻勢に対抗して安易な値下げを行えば、利益率が瞬く間に悪化する構造にあった。 長い模索期間を経て、パリミキは近年、明確な戦略転換を行っている。それは「脱・画一化」と「エンターテインメント化」である。郊外型の「ロッジ型店舗」や、ヴィンテージ感のある「メゾン型店舗」を展開し、店舗そのものを滞在型の空間へと作り変えた。ここでは、時間をかけた丁寧な検眼や、カフェのようなリラックスした接客(コミュニケーション)が提供される。2024年3月期の決算では、営業利益が前期比40.0%増の10億2500万円と回復基調にあり、不採算店の整理と高付加価値路線へのシフトがようやく実を結びつつあることを示している。

愛眼(Aigan):生存をかけた黒字化への道程

「メガネの愛眼」もまた、赤字体質の脱却に長い時間を要した。SPA勢との価格競争に巻き込まれ、ブランドの独自性が埋没したことが主な要因である。しかし、直近の2024年3月期から2026年3月期にかけてのデータでは、復調の兆しが見られる。 2026年3月期第2四半期において、営業損益は2億3800万円の黒字(前年同期は赤字)に転換した。この背景には、無理な売上拡大を追わず、不採算店舗の閉鎖を進めると同時に、製品価格の適正化(値上げ)を実施したことがある。売上高は140億円規模と、トップグループ(JINSの900億円、Zoff・メガネスーパー連合の700億円規模)からは大きく水を開けられているが、小規模ながらも利益を出せる体質への転換、「縮小均衡」戦略が奏功していると言える。

メガネスーパー(ビジョナリーホールディングス):高付加価値路線の限界と破綻

メガネスーパーの事例は、戦略の正しさと財務的体力のバランスの重要性を教訓として残している。星崎尚彦氏(元社長)の主導下で進められた「トータルアイ検査」などの高付加価値サービスは、安売り競争とは一線を画す差別化要因として一時的に業績をV字回復させた。しかし、高度な検査機器への投資や専門スタッフの人件費は重く、継続的な成長を支えるキャッシュフローを生み出すには至らなかった。 経営権を巡る混乱やコンプライアンス問題も重なり、同社は投資ファンドHorusの傘下に入り、2024年1月に上場廃止となった。そしてこの動きは、次章で詳述する業界最大級の再編へと繋がっていく。

第三次業界再編と「統合」の時代(2024年-2026年)

2020年代半ば、日本の眼鏡業界は新たなフェーズに突入した。それは、自律的な成長の限界を悟った企業同士による、資本の論理に基づいた「大統合」である。

Zoffによるメガネスーパーの吸収:相互補完の巨大連合

2025年10月1日、Zoffを展開する株式会社インターメスティックは、ビジョナリーホールディングス(メガネスーパー等の親会社)の全株式を取得し、完全子会社化した。このM&Aは、業界地図を塗り替えるインパクトを持っている。

戦略的シナジーの分析

この統合の核心は、顧客層と強みの完全な補完関係にある。

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Zoff
(インターメスティック)
メガネスーパー
(ビジョナリーHD)
統合によるシナジー
主要顧客層10代〜30代の若年層・ファミリー層50代以上のシニア層・富裕層全世代をカバーするポートフォリオの完成
強みファッション性、SPAによる低価格、ブランド力高度な検眼技術、アイケアサービス、補聴器販売「安さ」と「技術」のハイブリッド展開
店舗立地駅ビル、ショッピングモール路面店、地域密着型立地立地重複の回避とドミナント戦略の効率化
課題客単価の頭打ち、シニア層の取り込み不足高コスト体質、若年層への訴求力不足相互送客による課題解決とコスト削減

売上規模においても、Zoff(約434億円見込み)とメガネスーパーグループ(約270億円規模)が合流することで、グループ総売上は700億円を超え、業界トップのJINS(900億円規模)を追走する強力な第2極が誕生したことになる。

キタムラ・ホールディングスによるビジョンメガネ買収:異業種からの参入

時を同じくして2025年10月、「カメラのキタムラ」を展開するキタムラ・ホールディングスが、関西地盤の「ビジョンメガネ」など3ブランドを擁するE2ケアホールディングスを買収した。

「ライフステージ・リテール」としての戦略

一見するとカメラと眼鏡は異なる商材に見えるが、両社には明確な共通項がある。それは「シニア層との接点」と「専門的な対面販売」である。 キタムラの主要顧客である高齢者層は、同時に老眼対策や白内障術後のケアなどで眼鏡を必要とする層と重なる。また、両社ともに「補聴器」という成長商材を扱っている点も見逃せない。キタムラは、写真プリントやカメラ販売で培った顧客基盤に対し、ビジョンメガネの持つ検眼・調整技術を提供することで、顧客のライフタイムバリュー(LTV)を最大化する「ライフステージ・リテール」への進化を意図していると考えられる。これは、眼鏡業界が単独の産業としてではなく、ヘルスケアやシニアライフサポート産業の一部として組み込まれていく未来を示唆している。

主要プレイヤーの財務・戦略比較(2025-2026年時点)

業界地図が大きく塗り替えられた2025年から2026年にかけての各社の最新状況を、財務データと戦略の両面から整理する。

財務・戦略比較テーブル(最新予測・実績ベース)

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企業名(ブランド)売上高規模
(億円)
営業利益率
・収益性
2025-2026年の戦略的焦点ステータス
ジンズHD
(JINS)
1,116
(26/8期予想)
11.6%
(高収益)
「圧倒的強者」・売上高1000億円の大台突破へ・近視抑制レンズ等の医療分野強化・米国・中国など海外展開の加速独走
インターメスティックG
(Zoff+メガネスーパー)
約775
(合算推定)
統合プロセス中「第2極の誕生」・ZoffのSPA力とメガネスーパーの技術力の融合・相互送客による顧客生涯価値(LTV)の最大化・上場維持(Zoff)と再建(VH)の両立統合・拡大
パリミキHD515
(26/3期予想)
3.0%
(回復基調)
「体験価値への回帰」・ロッジ型/メゾン型店舗への改装推進・エンタメ要素を取り入れた接客・東南アジア市場での展開復調
OWNDAYS300超
(推定)
非公開
(高成長)
「グローバル・ニッチ」・国内店舗数272店(25年8月時点)に加え海外拡大・独自カルチャーによる人材採用力・LVMH系ファンド支援によるブランド向上成長
愛眼158
(26/3期予想)
1.4%
(黒字定着)
「堅実経営」・無理な売上拡大を追わない縮小均衡・補聴器や高付加価値レンズへの注力・不採算店整理による利益体質確保安定化

※数値出典:JINS、インターメスティック、パリミキHD、愛眼、OWNDAYS。
※インターメスティックGの売上高は、Zoff単体の上方修正後予想(504.5億円)とビジョナリーHDの直近売上(約270億円)の単純合算値。

各社の現状分析と展望

① ジンズホールディングス (JINS)

現状: 2025年8月期の実績で売上高972億円を達成し、続く2026年8月期には売上高1,116億円、営業利益130億円を見込むなど、業界内で頭一つ抜けた存在となっている。

強み: 粗利率約78%という圧倒的なSPA効率に加え、R&D投資に資金を回せる財務体力が強み。

展望: 「見る」だけの眼鏡から「目の健康を守る」眼鏡へのシフトを鮮明にしており、近視進行抑制レンズなどの医療領域での収益化が期待される。

② インターメスティックグループ (Zoff + ビジョナリーHD)

現状: 2025年11月にZoff単体の通期業績予想を売上高504.5億円、営業利益59.8億円へと上方修正するなど好調を維持。これにメガネスーパーなどの約270億円規模が加わる。

戦略: 若年層に強いZoffと、シニア・技術に強いメガネスーパーの補完効果は大きい。当面の課題は、異なる企業文化とオペレーションの統合(PMI)をいかにスムーズに進めるかにある。

展望: 成功すれば、JINSを脅かす強力なライバルとなる。特にシニア層の取り込みにおいてJINSに対し優位に立つ可能性がある。

③ パリミキホールディングス

現状: 2026年3月期の売上予想は514億円、営業利益15億円と、コロナ禍の低迷から脱しつつある。

戦略: 「安売り」の土俵には乗らず、店舗での滞在時間や会話を楽しむ「コト消費」に特化。郊外の「ロッジ型店舗」は他社との明確な差別化要因となっている。

展望: 顧客単価の維持・向上が鍵。ファンビジネスとしての色彩を強めており、一定の固定客層を掴み続けると予測される。

④ 愛眼 (Aigan)

現状: 2026年3月期第2四半期で営業黒字を確保し、通期でも黒字を見込む。長年の赤字体質からの脱却が鮮明。

戦略: 大規模なチェーン展開競争からは距離を置き、地域密着型の堅実経営にシフト。補聴器販売の比率を高めるなど、高齢化社会に即した商品構成へ転換している。

展望: 爆発的な成長は見込めないものの、底堅い需要を取り込み、生存領域を確保することに成功している。

未来展望と新たな潮流

「近視パンデミック」と医療領域への回帰

デジタルデバイスの普及により、世界的に近視人口が爆発的に増加している。これに伴い、眼鏡市場は再び「医療」の側面を強めている。特に注目されるのが「近視進行抑制」分野である。小児の近視進行を遅らせる特殊レンズや、オルソケラトロジーとの併用眼鏡などの需要は、2025年から2032年にかけて年平均成長率(CAGR)で高い伸びが見込まれている。 JINSやZoff、そしてメガネスーパーの技術力を取り込んだ新生インターメスティックにとって、この高単価・高リピートの医療領域は、次の最大の収益源となる。単に「見えるようにする」だけでなく、「悪化を防ぐ」という予防医療的なアプローチが、眼鏡店の新たな社会的役割となるであろう。

サステナビリティと素材革命

格安眼鏡の大量生産・大量廃棄モデルに対する環境配慮への要求も高まっている。石油由来のプラスチックから、植物由来のバイオプラスチックや、リサイクル可能な素材への転換が急務である。JINSなどは既に一部で取り組みを始めているが、今後は環境対応がブランド選好の主要な指標となる。

デジタルとリアルの融合(OMO)

アプリでのバーチャル試着や、AIによる似合い度判定は既に一般的となったが、今後は「遠隔検眼」などの規制緩和を見据えた技術革新が進むと考えられる。店舗に行かずとも、自宅で検眼から購入まで完結するシステムや、店舗では高度な相談のみを行うといった役割分担が進む。キタムラHDのような異業種が持つ店舗網が、こうしたタッチポイントとして機能する可能性もある。

結論

2000年に始まった日本の「格安メガネ」の歴史は、25年の歳月を経て、単なるディスカウントの歴史から、産業としての高度化と統合の歴史へと昇華した。 JINSとZoffが開いた「価格破壊」の扉は、眼鏡をファッションアイテムとして民主化することに成功した。その後の過酷な淘汰圧は、OWNDAYSのような強靭な企業文化を持つプレイヤーや、パリミキのような体験価値を再発見した老舗を生き残らせた。 そして現在、Zoffによるメガネスーパーの買収や、キタムラによるビジョンメガネの買収に見られるように、業界は「安さ」と「技術」を別々の企業が提供する段階を終え、一つの企業グループ内で全方位的なサービスを提供する「総合アイケア産業」へと脱皮しつつある。

今後の勝者は、SPAによるコストリーダーシップを維持しつつ、高齢化社会に対応した医療的ケアや、デジタル技術を駆使した新しい顧客体験を提供できるハイブリッドな企業となるであろう。眼鏡業界の変遷は、日本の小売業がデフレ経済からどのように脱却し、新たな付加価値を創造しようとしているかを示す、極めて示唆に富んだケーススタディである。

考察

当時の下北沢には、同価格帯のメガネ屋が3店舗あったと記憶している(名前は思い出せない)。つまり今名前を聞かないメガネ屋は敗者となり潰れてしまったのだ。はたまた勝てば官軍、Zoffは上場した。それだけ流行りの市場は競争が激しく、まさに戦争といっても過言ではないのだと改めて感じる。

業界の大手がゲームチェンジャーにより寝首を掻かれるというのが、ベンチャーにおいてはサクセスストーリー。眼鏡産業においては大手が完敗かと言えばそうではなく、新たな打ち手で市場を広げるという点も面白い。もちろんこの戦争の中で完敗して(潰れて)しまった老舗企業も少なからずあるはずだ。

大手もベンチャーも、常に挑戦し続けるしかないというのがビジネスの世界。やはりビジネスはおもしろいし残酷だ。

<参考文献・出典>
本レポートで参照した主な情報源および関連リンクは以下の通りです。

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